ASA-CHANG&巡礼 FEAT. 小泉今日子

PEOPLEText: Yasuharu Motomiya

小泉さん自身もそういった日本の文化みたいなところに興味はありますか?

K:どちらも同時にあるじゃないですか、古き良きとか、昭和初期生まれの親に育てられてるから、日本の文化みたいなところで普通に育てられていますが、別に新しいハイテクなモノあがあれば普通に手に取れる環境で育ってるので、どっちもアリなんですよね自分の中で。それが一つになっているのが、巡礼の音楽のような気がします。着物も好きですし、海外のファッションも好きですし。

巡礼の音楽を聴いていると、現代テクノロジーのハイパーな部分と、日本のスピリット見たいなところを同時にとても感じてしまいます。

A:出ちゃうんだよね、あれはミックスしようとしても絶対でないものだから。

K:そうだよね。意識的に作ろうとしたら、気持ち悪い作為的なものになっちゃうだろうし。

A:そう。ミクスチャー的なものではなくて、もっと根っこから出てきた音楽だから、あんなに他で聴いたことないものになっているのかなと思います。

それでは、今現在興味があるアートフォームやアーティスト、または良く聴いている音楽などはどういったものか教えてください。

K:着物とかと少し近いかもしれないですが、最近日本画とかが好きですよ。小倉遊亀とか、一昨年くらいに観に行って。小茂田青樹とか。案外ポップアートなんだなって思って。怖いのもあるのですが、可愛いのもあって、女の人がお風呂に入っている絵だとか。たまたまテレビを見ていたらその絵が出てきたのですが、番組が終わってしまって、誰の絵だったんだろうって思って。その後たまたま友達と話していたら今とっても可愛い絵の展覧会がやっているから観に行ったらと言われて、どんなのって聴いたら、そのお風呂に入っている人の展覧会だって言われて。それから良く観ていますね。音楽はいろいろなものを聴きますが、そんなに激しくこれだっていうのは今はないです。

A:ボクも激しく音楽聴くタイプじゃないですね。家では聴かないです。昔からそうで、リスナーとしては最低のリスナーだと思いますよ(笑)。遮断してるわけじゃないけど、ずうっと朝から音楽やってて、家帰ってきてまた音楽聴く気にはなれないじゃないですか、だからDJのようにいろんな音楽を知ってるわけではないし。今興味があるのは、コンテンポラリーダンスと巡礼の音が相性がいいっていうのですね。コンテンポラリーダンスの人たちが「花」とかガンガン使うんですよ、何団体か分からないけど、「花」で踊っていいですかという問い合わせがとても来るんですよ。そういう人たちにしたらとても踊り易いらしくて。

K:分かる気がする。

A:そういう現象が起きてて、イデビンアンクルーっていうダンスカンパニーがあるんだけど、彼等の公演の音楽監督をやることになって、東京公演は終わったのですが、今はニューヨークとカナダを回ってると思います。

K:「背中」のPVもね、すごい可愛かった。

A:そう、ダンスモノで。それはイデビアンクルーの人ではないのですが、ダンスだけのPVでエフェクトとかもまったくなくて。

K:普通の女の人が椅子に座って、ずーっと踊っていて、色っぽくて切なくて可愛かった。

A:今、ツマミ一個捻れば映像とかどんどん加工できる時代だから、逆に踊ってるだけっていう映像を作ってみたいっていうのがあって、監督とそういった映像を作ってみたのですが、巡礼の音がダンスとの相性がすごく良いみたいですね。

それでは、なぜ表現手段として音楽を選んだのでしょうか?

A:何かこう状況に引っ張られるようにヘアメイクの仕事ができない程、スカパラが忙しくなっていって93年にスカパラは辞めたのですが、自然に音楽のほうに移ってきたタイプなので、不思議な経緯を辿っているなと自分でも思います。それから、ずっとセッションマンとか人のサポートをやってきて、98年くらいから巡礼を始めてみたり。巡礼の音はその当時もうできていたので、スラスラ譜面を書いちゃうわけですよ、頭の中で音が鳴っているので、書かざる終えないというか。

あのようなリズムが頭の中で鳴っているわけですね?

A:鳴ってますね。メンバーに伝える時に譜面だと楽なんですよ実は。書けば絶対そうなるから。ただノイズとも聴こえるところもプログラムするメンバーに全部指定してあったりして。ランダムに聴こえるところでもちゃんと一緒に止まって聴こえるのもそのせいで、情景として表現したくてそのように計算してますけど。

それでは、小泉さんは女優としても活動なさっていますが、歌うことと演技することの共通点などは何かありますか?

K:あまり変わらないです。私は音楽をやりたいからとかそういうので始めていないから、もっと単純に人を幸せにしたりだとか楽しい気分にしたりだとか、そういった力のある存在になりたいという思いで始めたので、だからただ伝えたいと思います。演技もそうだし、歌もそうだと思います。自分にとっては、そんなに変わらないものですね。だけど、歌うことのほうが楽しいかな。やはり演技や映画は監督のものだと思う、監督のニーズに応えることとか、それを理解することとかなんですが、歌うときはもうちょっと何かが突き抜けたりするから。

今回のレコーディングは何か突き抜けましたか?

K:でき上がってみたら突き抜けてたような気がしますね。歌ってるときは巡礼の音楽とかだと着地点は私は分からないで、歌い易いトラックができてて、それを私が歌うという感じで、ある程度こんな風になるのかなという想像はしていましたが、具体的には良く分からないですよね、でもでき上がってみたら想像は超えてたし、何かがすごい突き抜けてたような気がします。

A:小泉さんの声をもらうときは、シンプルなトラックで作っておいて、それを分解・解体してまた組み立ててCDの音にするから、完成形を聴かせる事はできないから、それを信頼の上まかせてくれて。小泉さんだから逆にこんなに(声)をエディットしちゃいけないだろうとはまったく思わないで、どんどん巡礼っぽく、巡礼も薄めちゃいけないと思って、それは逆に失礼に当たると思って。そうしたら、あんな作品になりました。

今回のコラボレーションをボクは革命的だと思いました。なぜなら、ASA-CHANG&巡礼のような音楽をボクの母親などが聴く機会がなかったと思うのです。それを小泉さんが歌ったことによってその間口を広げたというか。

K:家のお母さんは気に入ってましたよ。

A:ホント! それはすごい!

K:もらって聴いていたら、母親が「これなに?」って。ASA-CHANGとやったんだよって言ったら「これ好き」って。

A:すごいねお母さん!

K:ASA-CHANG、会ったこともあるよ。

A:会ったこともあったっけ? 若い頃のお母さんの写真は見たことある。(笑)

K:お互いのお母さんに会ったことあるんですよ(笑)

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