NUEVA(ヌエヴァ)2003

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

この多くの出展作品の中で特に印象的だったのは、グラフィックデザイナーの青木克徳によるドキュメンタリーフィルム「Kami-Robo」。題材となる人物は、造型作家でもある安居智博。彼が制作した紙でできたロボットが織り成す想像世界を追ったストーリーで、20年間その手の中で「Kami-Robo」達を戦わせたことで培われた超絶技巧の職人的手捌きと、その世界を舞台に繰り広げられる、人間模様ならなぬロボット模様が見所だ。

女性には少し分かりづらいかもしれないが、子供のころ超合金ロボット同士を戦わせたことのある人であれば容易に感情移入してしまう。幼少期への懐かしさと、このような個人的愉しみにフォーカスしたドキュメンタリーに興味をそそられた。ボクはこの作品がとても気に入ったので計3回ほど観た。

この様に、自分のお気に入りの作品を会期中であれば何回でも観る事ができるのがこのフェスティバルの良いところだろう。と同時にこの様に、いつでも好きな作品にアクセスできるという状況にいるということは、時々集中できない時間も訪れる。例えば、Aのスクリーンを観ようと思い、ヘッドフォンを着け集中しようとしたところ、たまたま目に入ったBのスクリーンに目を奪われ、音はAの音だが、映像はBというあべこべの状況になる。またAのスクリーンに集中しようとするが、やはりBの方が気になってしまって、結局Bへと移動。しかし、やはりAも気になってしまうという少し混乱気味の状態で、まるでテレビのように、サッカーを観ているのだが野球も気になって、チャンネルを交互にかえているうちに、どちらちもどうなっているのか分からないというような状況になってしまう。時たま訪れる、この様な状況を乗り切りつつ忍耐強さと集中力を持って、観て周るのも観賞のポイントだろう。

従来のフィルムフェスティバルとは違った観点から作られた本イベント。特にこのユビキタス型の上映方法が、果たして映像の持つ価値を高めるのかどうかは分からないが、観客がこの経験を咀嚼、消化する事によって次世代の映像表現が生まれてくるのかもしれない。これからどのような新しい映像体験を映し出していくのか楽しみにしたい。

出品アーティスト:スパイク・ジョーンズ、タグ・エイケン、ハーモニー・コリン、アトム・エゴヤン、ジョン・ガリアーノ、宇川直宏 他多数

NUEVA 2003
日程:2003年12月10日〜25日
会場:ラフォーレミュージアム原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1丁目11−6
主催:NUEVA実行委員会
https://www.nueva2003.com

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Yasuharu Motomiya

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