セルジオ・パンガロ

PEOPLEText: Gisella Lifchitz

古典派と比べられることに関しては、どう思いますか?

すでに社会にある何かを取り入れ、それを作り変えるというのが僕達です。例えば、「ダンディ」は財産のある者のことを指しますが、僕は、「ダンディ」ではない。どちらかというと、反ヒーロー派です。しかし、ダンディの身につけるような服を着、彼らが遊ぶように遊ぶ。

現代の容姿が重要視されることについてはどう思いますか?

オスカー・ワイルドは、容姿は人を映し出すと言っています。そこから、人間性を読み取ることができるのです。例えば、ある物乞いがバーにやって来て、男に金を乞う。男は軽く頭を振り、物乞いは静かにバーを出て行く。ある花売りの女の子が男にブーケを勧めた。男は軽くうなずき、「ノー、ダーリン」と静かに囁く。彼女は微笑んだ。その男は、おそらくこの時代の者ではないでしょうね。彼の人間性と、人との接し方は尊敬すべきものだと思います。

なぜ、ラウンジミュージックなのですか?

子供の頃から、両親が聞いていて、両親と音楽について、色々話すことができるようになる頃には、好みが共通していました。ラウンジミュージックは、言葉をのせて何かを語るにはちょうど良い音楽です。特に、偏執狂ぎみの人は、そのように聞くことが多いと思います。僕の考える傑作の条件は、自由に解釈ができる音楽です。

どのようにしてバカラの女性たちと知り合ったのですか?

10年ほど前に、アート学校で教える親友のマルシア・シュヴァルツに頼まれて、ヌードのモデルをしたことがあるんです。その頃は、お金もあまりありませんでしたし。アドリアナ・バズクエズは、その学校の生徒の一人で、彼女に、一緒に組まないかと誘いました。彼女が入る前、バカラは僕とサンプラーだけの、ソロ・プロジェクトでした。もう一人の、ヴァネッサ・ストラウフは、40年代のハリウッドの美学を愛しているファッションデザイナーであり、女優でもあります。彼女は2年前に加わりました。

グループの名前はどのようにして決めたのですか?

この名前はとても気に入っています。グラマラスなカジノゲームと、クリスタルの名前とも共通していて、エレガントな感じがするし、ローカルっぽさもある。

ブエノスアイレスのどのようなところが好きですか?

街そのものが好きです。建物は美しいし、ボヘミアン・ロマンス調なところがいいです。文化的なことで言えば、アーティスト達がコーヒーを飲むために集まる、カフェ文化が気に入っています。タンゴやメランコリーも好きです。かつて存在したエレガントさが残っている。ブエノスアイレスでは、上流階級に見える人でも実はそうでもなかったりします。

パンガロの音楽は、エレガントさと喜劇っぽさが微妙に入り混じっている。そのサウンドは人を今はなき美しい時代へと連れて行ってくれるかのようだ。テクノロジー、ラウンジミュージック、タンゴに関して言えば、バカラの楽曲は、今の時代に忘れかけられているものを思い出させてくれる。

バーを出ると、以前よりブエノスアイレスがメランコリックに感じられた。バスを待つ間、冷たい風が吹いてきた。明かりがなんだかいつもと少し違って見え、詩人になったような気分で周りを見渡してみる。頭の中では、ロマンティックなアーティストの話が反芻される。あたりはすでに暗かったが、確かに私はこの風景の一部になっているのだと感じた。

Text: Gisella Lifchitz
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Gisella Lifchitz

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フェルナンド・トロッカ
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