ロバート・クランテン

PEOPLEText: Jonathan Carr

ゲシュタルテン出版社では、新境地開拓のために多くの努力を積まれていますよね。レイアウトからフォーマットまで、どこをとっても、とても新鮮です。このような展開をする上で、見本にした人物などはいますか?

マルセル・デュシャン、マン・レイ、ルイス・バンネル、マレーネ・ディートリッヒ、ジョン・ピール、ジョン・レイドン、チャーリー・パーカー、ケン・アダム、スタニスロー・レム、黒沢明、スタンリー・キューブリック、レン・ライ、ビリー・ワイルダー、スージー・スー、ソウル・バス、ゲルハルト・リヒター、ヨーゼフ・ボイス、マシュー・バーニー、マーティン・スコセッシ、ベルナルド・ハーマンなど、その他にも多くのライターやミュージシャンは、憧れの的ですね。


72-dpi; Die Gestalten Verlag, 2003

ゲシュタルテン出版社から発行されている出版物で登場するデザイナーの多くは、プリントというメディアだけではなく、デジタルやビデオなどの分野でも活動していらっしゃいますよね。そういった、異種ともいえるメディアが、ゲシュタルテン出版社のページに登場するということで発生する、難しさなどはありましたか?またそういった問題は、どのように解決しましたか?

他の本もそうなのですが「3 Deluxe Projects」や「DSOS1」「72dpi Anime」「Device」「Writing」には、DVDやCD-Rといったデジタル素材が添付されています。「DSOS1」などは、デジタルプロジェクト上の本が、どのように機能するかを紹介した好例です。プリントにある程度限界があるのは確かです。でも、紙面上でデジタル作品を表現するとか、コンテンツを再度掘り下げて解釈するといった可能性を持ったものだと思います。


What a Happy Life & Death! by Furi Furi Company; Die Gestalten Verlag, 2002

多くの会社がプリント上のものをデジタル化しようと試みていた時に、ゲシュタルテン出版社では、それとはまったく逆の方向に進みましたよね。そしてその結果、デジタルカルチャーにとっては、とても特別な存在となる出版物を発行するに至りました。ゲシュタルテン出版社で本をリリースするということは、デザイナーのキャリアにおいても、輝かしい成功と見なす風潮もあります。そういった、デジタルとプリントという2つのものについて、クランテンさんはどのような意見を持っていますか?またこれらは、2つの別々のものなのでしょうか?あるいは何か他のものなのでしょうか?紙とデジタル、そしてエレクトロニックには、どのような未来があると思いますか?こういった点をふまえつつ、ゲシュタルテン出版社は今後、どのような方向へと進んで行くのでしょうか?

本は手にとって感じることができるものです。重さもあり、においもあり、そして焼いて無くしてしまうことも可能なものです。素材に対する人々の好みは、想像以上に以外と強く、実際に触ってみたり、その本に深い愛着心を持つことは、その人によっては、素材とその素材が提供する情報との間にある、極めて抽象的な関係です。

何かを具体化するということは、半永久的なものにするために、デザインの要素を実体的な物体に素早く変化させるというものです。触覚的な要素は、ここでは大変重要な役割を担っています。フォームあっての機能という考え方は、機能あってのフォームという考え方とひと組です。プリント作品では、かなり膨大でフェティッシュなキャラクターを求めることが可能です。

それは、バーチャル的、あるいは抽象的なデザイン書を、各々のライフスタイルを取り入れたり、具体化させたりする傾向が人間にはあるからです。音作りが大好きな人達と同じで、彼らもまた、どこかで聴いた好きなサウンドをオリジナルとして、好きな音を自分のものにしたいという気持ちがありますよね。

将来的には、デジタルな範囲内での可能性が、具体的なコンテンツとブレンドされるのではないかと思っています。現段階ではコンテンツもまだ、再考の余地があると思います。今よりももっと、抽象的なコンテンツが受け入れられるには、もう少し時間が必要なようです。今はちょうど、パラダイムが変化している最中なのだと思います。


Writing by Markus Mai and Arthur Remke; Die Gestalten Verlag, 2003

これから先、プリント以外に、種類は違えども、合体してひとつのもになるようなメディアが出てくると思いますか?また、もしあった場合、これはデザインにとって、そしてゲシュタルテン出版社にとってはどのような意味合いを持つのでしょうか?

自分達の周りで何が起こっているのかを、何度もテストしたり、そしてたまには失敗しながらも、注意深く観察する、という意味だと思います。例えば、旅行ガイドブックは、写真や表などがあって、アナログ的な情報があり、ウェブのURLや電話番号、ホテルのリストが掲載されているということは、誰でも容易に想像がつく、いわゆるよくあるガイドブックです。でも将来のガイドブックにはDVDがつき、そのDVDには現地やハイキング先のイメージや、音楽も収録されるでしょう。未来の本のコンセプトは、様々なメディアのいいところだけをピックアップして、構成されるのではないのでしょうか。

Die Gestalten Verlag
住所:9/10 Mariannenstr., 10999 Berlin
TEL:+49 30 72913 2000
verlag@gestalten.com
http://www.gestalten.com

Text: Jonathan Carr
Translation: Sachiko Kurashina

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