第6回 ファッション・ブエノスアイレス

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz

しかし、ポワーセルのショーのような良いものがありつつも、なぜか全てが似たり寄ったりな印象が感じられた。どこよりも強烈な印象を与えなければいけないはずなのに、誰もが一様に同じことをやっているのだ。ユニークなものをやりたい、という意気込みは感じられる。しかし、繰り返されるのは、同じパターンばかり。そんな退屈な気持ちを振払うために、私が次に訪れたのが、エステベコレナ・ブラザーズのショーだ。

ロボットのように動く、男性モデル達。そしてその影が、巨大スクリーンに反映される。またそのスクリーンには、アルゼンチンのビーチ、山、そして平和な南部の風景など、休暇の目的地として行ってみたい場所が映し出されていた。すると突然、古代の様子が私の目の前に出没した。それは、太古時代とその場所に関するストーリーを紹介するパフォーマンスで、男性モデルが古代人となり、私達を過去に遡るツアーにいざなってくれた。

舞台を歩きながら「その日一日を完璧燃焼するように生きよ…」と囁くその姿はまるで、「デッド・ポエッツ・ソサエティ(いまを生きる)」の映画から飛び出してきたかのようだ。映画と唯一違うのは、どの男性もとてもファッショナブルであり、クールで着心地のよさそうな下着を身に付けていたことである。民族的なタッチとハイテクをミックスさせることで、エステベコレナ・ブラザーズが驚きの演出を試みていたことは確かだが、出演していたモデル達に、リアル感を感じることはできなかった。もしかしたら、モデルという存在自体がリアルではないのかもしれない。そしてそれだけが、今ここにある事実だ。

ここまで、マイナスポイントばかり並べてしまったが、演出面に関しては、かなり上々だったのではないかと思う。ファッションは今では、アートに通じるもの。今回、表現したいこと全てを伝えきれなかったデザイナーも多くいるが、上質な音楽やテクノロジーに支えられて、見る側にインパクトを与えていたのは確かだ。ファッション・ブエノス・アイレスは、これからも音楽や映像を通じて、オリジナルの作品やショーを紹介し続けることだろう。

Fashion Buenos Aires – 6th Edition
会期:2003年9月1日(月)〜4日(木)
会場:Rural Society, Buenos Aires, Argentina
info@grupopampa.com
http://fashionweek.grupopampa.com

Text: Gisella Lifchitz
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Gisella Lifchitz

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