「ライティング:アーバンカルチャーとその先」

THINGSText: Michiko Ikeda


Pfadfinderei Allstars – Working Without My Computer, Berlin 2002

これは、ベルリンを拠点に活動するデザイン事務所・ファドフィンドレイが制作した作品。マイ氏の説明によると、これは当初、「バック・ジャンプス」という雑誌のために制作された作品だとか。「コンピューター以外なら、何を使って制作してもいい」とのリクエストで作られた作品だ。


Hektor, Work Set

これは「ヘクター」という機械で、チューリッヒで活動するユーグ・レーニとウリ・フランケのコラボレーションによって開発されたもの。壁を這うようにスプレーしていく機械としては世界初のものだが、今の所、生産と販売の予定がないのが残念だ。ヘクターは、ベクターがベースとなった、スプレー缶を直接ボディにセットし、始動するマシーン。 コンピューターがイマジネーションの至る所で登場する昨今。ヘクターも例外ではない。『いくらコンピューターの技術が発達しても、人間の手で描かれた動きを完璧に表現できるマシーンは存在しない』とマイ氏は語る。


Kraze, Pips:lab, Amsterdam, 2002

光のアニメーションを披露しているのは、アムステルダムを拠点に活動するグループ「Pips:lab」。メンバーの正面にカメラを設置し、電球がついた空のスプレー感を使ってライティングをするというもの。区切らずに一気にスプレーを動かすことで、このような目をみはるような効果が可能となった。

時を重ねるごとに、その重要性が高まりつつあるライティング。このような状況の今日、ライティングは至る所に出現し過ぎているのではないか?という疑問をマイ氏に投げかけてみた。『情報が氾濫しているのは確かです。いろいろな意味で、昔からあったグラフィティのスタイルの存在が難しくなりつつあるのは、どこにでもライティングが溢れているからだと思います。そして、ストリートアートを通じて伝統的な方法を打破し、新しいものを作り出したいという願いは、キャラクター、ポスター、ステンシルを使って描いたり、都会的なメッセージに呼応したりすることで解決されていると思います』。

今ではあらゆる分野で目にすることが多いライティング。しかし、現存する分野の中でも、何か今までにない新しいスタイルの確立や試みを行うことができる、穴場的なポイントがきっとあるはずだ。そして本書こそ、そういった情報が氾濫した中で見い出すことができる、希望の光に焦点を当てたものであり、見応え、読み応えともに十分の一冊だ。

Writing – Urban Caligraphy and Beyond
著者:Arthur Remke, Markus Mai
編者:R. Klanten
仕様:192 ページ、24 x 28 cm、オールカラー/ソフトカバー/CDR付属
発売日:2003年7月
定価:US 45.00 / EURO 39.90 / UK 26.99
ISBN:3-89955-003-X
発行:ディゲシュタルテン出版社
https://www.gestalten.com

Text: Michiko Ikeda
Translation: Sachiko Kurashina

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