デマニフェスト

THINGSText: Sachiko Kurashina

キャンバスでのフィリグリー(金属のすかし細工)作品やグラフィティ、フォント、2トーンのポスター、レコードのジャケット、シルクスクリーンの作品など、実にバラエティに富んだ作品が満載ですが、どのような基準で作品の選出は行われましたか?

M:作品を選ぶ際の主な基準は、その作品を発展させてみること、体験してみること、あるいは壊してみたり、そして批評しないこと。僕自身、スタイルにはあまり興味がありません。それは、ある特定のスタイルを作ってしまうと、それ以上の展開が望めなくなってしまうから。この本では、何に対する期待感を無いものとして、そのものを探り、体験する、ということを心掛けました。デザイナーやクライアントのためではなく、自分自身のためにデザインをする時、そこには何も心配する物事はないと思いますよ。

S:今回のような本を制作する最大の醍醐味は、コンテンツに関しては全面的に自分の思い通りにできること。そしてどんな基準も自分で作れることだと思います。実際、今回紹介している作品に対しても、何も制限はありませんでしたしね。

「決然とし、かつ折衷的、野心的な名作集」という、この本についての評価もありますが、制作者として本が完成した今、どのような想いをこの作品集にはお持ちですか?

S:みんながそうであるように、誰しも作品がもっとよくなる方法を常に模索していると思います。僕は自分自身に対してとても批判的なので、そのことでかなりイライラしてしまうこともある。だから今回、マイケルと一緒に活動できて良かったです。彼は、素晴らしいビジョンを持ってるし、かなりの野心家ですからね。

M:これについてはあえて「ノーコメント」にしておきます。

この本のおすすめポイントは何でしょうか?

S:この本の制作は本当に楽しかった。だから、僕達が味わった楽しさが、読者にも伝わればいいな、と思います。おもしろ本だな、と思ってくれたり、読者がこの本から何かを得てもらえれば何よりです。

M:特に「ここ!」というのはないですね。後ろのページから読みはじめてもいいし、横から眺めるのもそれはそれでアリ。スティーブの言う通り、読む人がこの本を楽しんでくれればいいですね。

現在、フリーとなってからは、どのような活動を行っていますか?

M:僕はちょうど、ESPNのプロモーション・キャンペーン用の、かなり大規模なデザインの手直しを終わらせたところです。

S:オーストラリアを去って以来ずっと、パントンのプロジェクトにどっぷり浸かった状態でした。なので今は、コマーシャル的なものに集中したいな、という感じです。

一番のお気に入りの都市はどこですか?

S:実は僕は今、イギリスに居ます。この本の制作を始めた当初は、マイケルがいるニューヨークに少し滞在していました。この本は、それぞれの国が及ぼす影響をかなり反映しています。そしてそのことが、本が持つ幅を広げていると思います。オーストラリアという国や、シドニーという街で生活できたのは、すごくラッキーでした。素晴らしいデザインやファッションが繁栄している場所でしたが、イギリスやアメリカの影響力がちょっと強すぎるかな、という気もしました。

M:ニューヨークは今、かなり盛り上がりに加速がついているようです。多くの若いアーティストが、クールな作品を生み出しています。でも将来的には、こことは違う、郊外の納屋付きの一軒家に、僕は住むと思います。

今後はどのような活動を行ってきたいと考えていますか?

M&S:いくつか面白いプロジェクトをかかえている他、夏にニューヨークで展覧会を開催、それとライブミュージックイベントをロンドンで行う予定です。どんなメディアでも、コレボレーションに関しては僕らは常にオープンです。様々な分野の人たちとの活動を率先してやっていきたいですね。


Demanifest
仕様:144ページ, 23×29 cm, カラー
発効日:2003年3月
出版社:Die Gestalten
ISBN: 3-931126-94-3

Text: Sachiko Kurashina

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