NIKE 公式オンラインストア

ニュー・タレント・コンテスト 2002

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz


Oscar Cantero: Between Fashion and Music

『僕は仕事人間なんだ。いつもデザインが頭からはなれない。』と言ったのは、オスカー・カンテロ。彼は、このコンテストで優勝した初の男性だ。

ヒップホップとタンゴ。その2つの音楽の類似性が、彼の作品では表現されている。70年代の映画に出てくるような、アフリカ系アメリカ人のギャングスター、40年代や50年代のジャズ・ミュージシャン、タンゴダンスのペティテロ、あるいはかっこよく服を着こなすグアポ。そんなキャラクターが、彼の作品では表現されている。

『ヒップホップの起源も、タンゴのそれとすごく似ていて、両方とも貧しい階級の人たちから生まれたもの。そしてカルチャー的にはすごく影響力なものになった。ヒップホップのグラフィティは、タンゴの衣装で使われるレースのようなもの。どちらも特有の言語を持ち、それがヒップホップならスラング。タンゴではランファルドなんだ。』

自らのマークを、デザインの上にプリントするのがオスカー流。そんなくずしが効いた彼のスタイルと、ゆったり感がある服が、仕立てられた服との調和を生み出している。『全て僕の色だけに染めたくなかった。ポケットをちょっとだけ大きくしてみたかっただけ。』

BAFについては『デザイナーだけではなく、モデルの歩き方とか、ステージデザインとかも個性的なこのファッションショーは、ブエノスアイレスでも興味深いイベントだと思う。コップをステージに向けて投げちゃっても、ここではOKなんだから』と、語る。

地元のファッションシーンでは、自らがフェアを開催し、そこで作品を販売するのが新しいブーム。彼もその波に乗っている一人である。今ではアルゼンチンのティーン・アイドルグループの担当デザイナーにまで成長した。

賭けにはリスクがつきもの。しかしオスカーの見解は『みんなが白を選べば僕も白。だけど僕の場合、何かを変えるために白を選ぶんだ』というものだ。子供の頃に彼が興味を持っていたのは、オルタナティブなカルチャー。それは今の彼のデザインでも見い出すことができるし、彼の制作への姿勢からも伺えるものだ。

「僕達は作品を制作するために、自分が持つウィット感をもっとシャープにする必要がある。」そう言う彼は、夏が始まる前に既に冬のコレクションを用意している、というスタイルをとっている。

作品にペイントし、更に何かを描き、染色を行う。そうしながら自らのスタイルを探し出しているのが、ガブリエラ・ヴァレラである。現在もアパレルショップで働く彼女。実家に帰る日と、オーナーが処分を下す服を待ちわびるのが毎日の日課だ。


Gabriela Varela: Collector of Remaining Fabric

彼女の作品に大きな影響を及ぼしているのが「ジョドウ」という中国のラブストーリー。『50年代のクリーニング屋さんのお話で、私が一番好きなのが服を干す場面。それから中国の文化についていろいろと調べ始めて、チャイナ服特有の簡素性に気付いたの。体を包み込むような服で、ファスナーもボタンもない。私はシンプルな服のほうが好きだから、すぐにチャイナ服にのめりこんだわ。』

自分の作品が広く紹介されたことが、今だに信じられないというガブリエラ。『BAFに出たことで、私の自尊心が高められたし、そのお陰で自分のキャリアを積んでいこう、という気になれた』と語る。普段でも着ることができる服を作り、それを発表し、売り、いろいろな人から影響を受け、そこから新しい出発点を見い出す。それこそ、人と人をつなげる作品を作り出す方法なのだ。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE