レスフェスト 2002

HAPPENINGText: Chiaki Sakaguchi


Chris Cunningham on RES magazine

待望のクリス・カニンガム特集は、彼の手によるミュージックビデオをカニンガム自身がセレクションし、それと本人のインタビューを編集した貴重なレトロスペクティブ。ヴェニス・ビエンナーレ、イスタンブール・ビエンナーレに出品、世界の現代アート界をも沸かす鬼っ子の作品一挙公開とあって、会場は超満員。プログラムの開始の際、総合プロデューサーのジョナサン・ウェルズが「Hello Chris, love from Tokyo!」と観客からメッセージをもらい、ロンドンにいるクリスにビデオレターを作成するというほほえましいイベントもあった。来年は、ぜひとも来日を果たしてほしい。

23日には、来日したジョニー・ハードスタッフとローガン、メディアレイピスト宇川直宏、SALマガジン編集長の大橋二郎を招いたトークショーが開催された。


Photo by Mike Sheetal

トークは、創作のインスピレーションからテクノロジーとセックスの関係にまで多岐にわたったが、ハードスタッフがレディオ・ヘッドとの仕事はコラボレーションというよりも強い信頼関係であり、トラックに制限されるミュージッククリップと、純粋な創作活動に違いはないと言い、それを受けて宇川が、イメージに向かってディテールをつきつめていくその作業に本質があると語ったのが印象的だった。また、予算が低いほどいい作品が生まれるという言葉に皆が頷いていたのも面白かった。すでに第一線で活躍しているクリエイターたちのベーシックな言葉は、多くの若きクリエイターたちに勇気を与えただろう。


Breath Control -History Of The Human Beatbox-Dir: Joey Garfield © 2002 Filet ‘0’ Fresh Productions

そんな感じで4日間、さすがに坐りっぱなしで、尾てい骨も辛かったが、本当に楽しませてもらった。個々の作品については、全部見たわけではないし、とうていここでは書き切れないので省略するが、やはりミュージックビデオには秀逸なものが多かった。また、意外とドキュメンタリーに面白さを発見してしまった。今回唯一の長編でフィーチャーされたジョイ・ガーフィールドの「Breath Control」は、人間の肉声だけでビートをつくりだすミュージシャンたちを80年代から追いかけた大作で、ドキュメンタリーの醍醐味をたっぷりと味わえた。デジタルカメラを持ち、街に出るというシンプルなアクションから生まれるドキュメンタリーには、アーティストの世界を見る視線がおしみなくにじみ出ている。一方、デザイン性がすぐれていても、コンテクストが弱いものには物足りなさを感じてしまった。テクノロジーのカタルシスを追究しつつも、ショートフィルムならではのコンパクトでシャープなコンセプトにやはり期待したいところだ。

作品には、すでにストリーミングで見られるものも多くあったが、こうしてダイナミックなシアター形式で鑑賞する醍醐味は、また格別だ。しかしできることなら、今後プレゼンテーションの方法にもっとバリエーションや工夫が可能ではないかなと思った。「BY Design」のプログラムで紹介されたダグ・エイケンの「ウィンドウズ」は、東京オペラシティアートギャラリーでの個展でも発表された本来インスタレーションの作品で、明らかに作品の強度が違っていた感がある。ただ、それを差し引いても、これだけの最新映像を、プロアマ問わず、音楽やデザインやアートの境界を超えて、純粋にまとめて見られる機会はそうめったにないから、貴重だ。

ジョニー・ハードスタッフは、今回のレスフェストの印象を「ヘルシー」という言葉で表現した。プロアマ問わず、ものづくりへの純粋なリスペクトに溢れるレスフェストは、健全なクリエイティブ・スピリットに満ちていた。ワールドワイドに広がるデジタルフィルムのネットワークにふさわしい形で、来年もパワーアップして開催されることを待ち望みたい。

RESFEST 2002 JAPAN
会期:2002年11月21日~24日
会場:ラフォーレミュージアム原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1丁目11−6
TEL:03-3406-8835
主催:株式会社ニューズベース
共催:RES Media Group (米国ニューヨーク州ニューヨーク市)
問い:RESFEST Japan Tour事務局 株式会社ニューズベース
resfest@resfest.jp
https://www.resfest.jp

Text: Chiaki Sakaguchi
Photos: Mike Sheetal

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