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ソナーサウンド・トーキョー 2002

HAPPENINGText: Jo Kazuhiro

SALONの針谷周作のナビゲートによる2日目の「ソナーサウンズ・レクチャー」は“AUDIO+VISUAL+MEDIA”というテーマの下、町田良夫、久保田晃弘、ジョエル・ライアンの3人をゲストに迎え、それぞれが短いパフォーマンスとレクチャーを行うという形式で行われた。

自作の「AMORPHONE」と「MAX/MSP」によるリアルタイム・プロセッシング・システムにより行われた町田良夫のパフォーマンスは、細かなフレーズとその音をプロセッシングした音とが重なり合い、心地よい雰囲気を作っていた。
その後のレクチャーでは「AMORPHONE」の製作過程の説明として、ドラム缶をハンマーで叩いてチューニング、通常のスチールパンとは異なる音の配列・音律になっている、現代のスチールパンと30年代のスチールパンとの中間の音がする、といった話題やMAXパッチの解説、また作品の解説として、楽器もパッチも一から音を作れる、ライブ演奏はその場での音作りである、といった話題が話された。特に、ハンマーを使用するためイヤパッドで耳を保護しないと作れない音色がある、作ることで分かる、といった話は興味深く聞くことができた。

前日に続いての登場となる久保田晃弘は、分断的なパルス音と同期して映し出される粗めなテクスチャを持つスクウェアな映像とを組み合わせたパフォーマンスを行い、その後のレクチャーでは前日に引き続き、コンピュータによるリアルタイムでの表現、アルゴリズムと即興との関係、表現におけるプログラミング、より介入しやすいインタフェイス、等への言及がなされた。練習によって向上するプログラムがあってもいいのでは、という話には共感がもて、今後の著作・表現活動が楽しみだ。

最後のジョエル・ライアン、彼も前日に引き続いての参加であり、再度バルーチャ・ハシムを通訳に迎えてレクチャーが進められた。まず、彼自身の楽器に対する考えとして、「touch」というキーワードの下に身体とコンピュータとの関係、身体の処理能力の素早さ、プログラムに対するユーザのコントロールの欠如、といった話題が話された。続いて彼の属している電子音楽の研究機関であるSTEIMの紹介として、Michel Waisviszによる回路に手で触れて演奏することのできるシンセサイザー「Cracklebox」や、手に装着する楽器である「The Hands」、複数のパラメータを同時に操作する事のできる「The Web」といった様々な楽器についてムービーを交えたプレゼンテーションを行った。その中でも、コンピュータを操作して音を作る場合、周波数や音量といったパラメータの変化として音が聴こえるが、通常の楽器や特に歌などでは、口の形や呼吸の量といった様々なパラメータを操作していても一つの音色の変化として聴こえるという話は強く印象に残った。

最後に彼自身の携わったプロジェクトの紹介として「TGarden」の紹介が行われた。この作品はコスチュームを身に付けた観客=参加者の動きをセンシングして空間を変化させていくもので、前日にも話題となった場としての作品を実現したものとなっていた。また、パフォーマンスでは、チェロのサンプル音の「SuperCollider」上でのグラニュラシンセシスにより、一つの素材からとは思えないほどの幅広い音を作り出していた。

時間の関係上、予定されていた討論等がなくなってしまったのは残念だったが、前日同様に興味深い話題が繰り広げられており、どこかでこの内容が公開されることを期待したい。

その後のイベントでは再びジョエル・ライアンのパフォーマンスが行われ、「SuperCollider」による高音質の音を会場に響かせていた。続いて、ワールズ・エンド・ガールフレンド、ヤマウチ、ポータブル・コミュニティー、砂原良徳ウルリッヒ・シュナウスフィブラナオ・トクイエンジェル・モリーナなどによるパフォーマンスが行われ、会場のZONEを音と映像とで満たしていた。

両日を通じて、昼と夜とのオーディエンスの数にかなりの差がありはしたが、双方ともに充実した内容であり、現在のエレクトロニック・ミュージックの一端を知る良い機会となったのではないだろうか。

ソナーサウンド・トーキョー 2002
会期:2002年10月12日~13日
会場:Roppongi Hills Information Center / THINK ZONE
TEL:03-5770-8777
https://www.sonarsound.jp

Text: Jo Kazuhiro
Photos: Hiroshi Watanabe, Jo Kazuhiro

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