「ゲーム・オン」展

HAPPENINGText: Alistair Beattie

レトロなゲーム機を展示してある部屋は、私にとって懐かしい場所へ旅行するような感じだった。それらをじっくりと鑑賞し、もう一度プレイすることは、その時に感じていた気持ちを思い出させてくれたし、しばらく思い出すこともなかった昔の過去のについての思いも蘇ってきた。実際の所、そういったものも少なからず期待していたのだけれども、それらのマシーンが、その時の気持ちを私に思い出させたパワーに私は驚いたのだ。昔の友だちの部屋の中を歩いているような気にもなった。僕はまた子供に戻った気がしたし、すぐに興奮して、まるで半狂乱のパックマンが星を獲得するのに奮闘し、山を越えるようにマシーンからマシーンへと走り回り、その時を楽しんでいた。私が言えることといえば、それは完璧にセラピーであるということ。と言うのも、その日は私にとって本当に大変な一日だったにもかかわらず、仕事場を離れて10分後に私はこじんまりとしたマシーンと、ピュアな8ビットゲームプレイのグラフィックにどっぷり漬かっていたのである。業界のルールやアイデアが今日私たちが知っている大規模な企業形態に固まる前に発明された、これらの初期のゲームのいくつかには本当の魔法があると思う。


Pong screenshot © Atari, 1971, Early arcade games.

次の部屋に行くと、そこでは家庭用ゲーム機における主なプレイヤーの出現について扱っていた。たった10年前のことなのに、コンピューターがエリート学者や化学者などの特別な分野だった時代の、シンプルなおもちゃのように扱われていたコンピューター開発の歴史を見ることができるのはとても良かった。もちろんゲームもシンプルで技術的には限界があった。しかし、そのようなことはどうでもいい問題である。その時代を象徴するもっとも適した例をあげるとすれば、それは、そのゲームは今でも尚、十分プレイすることを楽しめるものだということである。

その他の部屋では、ゲームのその他の特徴や、マーケティング、ジャンル、キャラクターデザイン、オーディオデザインといったゲーム産業の様々な特徴を紹介。また、アメリカと日本のゲーム産業の違いにハイライトを当てるだけではなく、ゲームをこれほどまでの超社会現象を引き起こした共通点にも着目している。上の階に行くと、アートとして定義される未来の開発、マルチプレイ対戦、オンラインブラウザゲーム、そして新製品のアイディアについての展示がなされていた。


Computer Space, 1971 © Al Kossow, Early arcade Games.

すぐにでも遊べるゲームなら、今ではどこにでもある。強調して言ってしまえば、これは完全な手近な文化の体験だし、静かな夜に自分自身を次の場所から場所へと飛び回すことができ、何か新しいものへと完璧に没頭できるものだ。そう思うと、ゲームとは素晴らしい。スーパーモンキーボールやソニック・ヘッジホッグ、はたまた初期の斬新なインターフェイスでの経験や、コンセプトを受け付けないジャンルなどのからは歴史的、技術的な関係を見い出すことができるのだ。宮本茂のような著名人のキャリアを垣間見ながら、任天堂のキャラクターブランドの開発についても探究できる。

このような包括的な展覧会において、デジタルゲーム文化の他のあまり知られていないランドマークを犠牲にしている印象があるが、本展でも紹介しきれていないものは展示されているものの10倍以上はあるだろう。特に、80年代初頭の英国のゲームシーンは明らかに無視されていた。アメリカや日本の開発者と同様にイギリスの開発者に焦点をおいたセクションも見たかった。スペクトラムの「マニック・マイナー」のマシュー・スミスのことを忘れることはないだろう。いらいらさせられながらもやったあのゲーム、あの音、モンティ・パイソン風のユーモアを忘れられない。

全体的に振り返ってみて、これは私達の生活に突如舞い込んできた、新しい社会現象に触れる素晴らしい機会である。エキサイティングで、夢中になれて、つまらなさのかけらもない。もしあなたがこの会場に行ったら、必ずしやはまってしまうゲーム、あるいはあなたの子供時代に戻らせてくれるようなゲームに出会えることは間違いない。一番奇妙だったのが、10年もやっていなかったのにもかかわらず、マシーンに近付くとすぐに次の動きやタイミングを思い出すことができたことだ。この展覧会は今年の終わり頃にも東京で開催される予定だ。ゲームカルチャーの神聖なホームランドで、必ずしや成功するにふさわしい展覧会だ。

“Game On” Exhibition
会期:2002年5月16日〜9月15日
会場:Barbican Gallery
住所:Barbican Centre, Silk Street London EC2Y 8DS
TEL:+44 (0)20 7638 4141
https://www.gameonweb.co.uk

Text: Alistair Beattie
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of Barbican Gallery

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