WXIII 機動警察パトレイバー

THINGSText: Shinichi Ishikawa

「1」と「2」は社会的テーマを感じましたが、本作はパーソナルなテーマを感じました。そして、登場人物はみな孤独感を持っているように感じました。

それは高山さんの最終的には個人的な人間のドラマを描くんだという資質が大きいと思います。準備稿の段階ではそこまで踏み込んでませんでした。高山さんの最初の宣言みたいなものがあって登場人物は皆何らかの欠損をもった人間なんだと。久住は怪我をしてますし、離婚もしてます。主要の3人が皆良い人ではないんですね。秦も好青年だけども刑事として甘ちゃんな部分を持っています。だからといって久住が模範的な刑事でもない。

キャラクターができ上がっている後藤ですら今回は完璧な人間としては描いていない。全てそんな感じでキャラクターを描いているので感情移入しにくい人も出てくるかもしれませんね。その分等身大の人間のドラマを狙っています。また、東京に住んでいる人間がコミュニケーションが苦手というのは、マンガを描く仕事をしているぐらいですから、自分の中にももちろんあります。

本作はセリフが少なめなかわりに、東京の街の描写はキメ細かいですね。

高山さんが強く言っていたのはストーリーはもちろん大事なんですが、それよりも強いテーマとして現在の東京の持っている空気感や時代の雰囲気をフィルムに焼きつけたいということがあった。神戸の大震災やオウム事件が起きた頃のどんどん不景気になっていった時代の都市に住んでる人の倦怠感やストレスを作品に定着させたかったようです。例えば、早朝にカラスがゴミを漁っているシーンや深夜のコンビニとかラッシュアワーの電車、終電の酔っぱらいの光景…お客さんが現実社会でも毎日見てる光景の羅列こそ、高山さんが一番やりたかったことじゃないかな。それは見事に成功していると思います。脚本の段階では、なかなか描けない領域で演出の力だと思います。

読者の皆さんにメッセージをおねがいします。

これまでずっとパトレイバーのファンだった方はいちいち僕が言い訳めいたことを言わなくても本作を見ていただければ、これもまぎれもなくパトレイバーがこれまで描いてきた世界観の上に成り立っている作品なんだということは御理解いただけると思います。映画としては自信作ですし、決してパトレイバーの名のもとに恥ずかしいできになってる作品ではないという自負はあります。1本の映画として見ていただければありがたいですね。

WXIII 機動警察パトレイバー
カラー/35ミリ/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/上映時間:1時間40分
原作:ヘッドギア
脚本:とり・みき
原案:ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」(小学館・少年サンデーコミックス所載「廃棄物13号」より)
キャラクターデザイン:高木弘樹/メカニックデザイン:カトキハジメ、河森正治、出渕裕
美術設定:渡部隆/プロップ・セットデザイン:武半慎吾/クリーチャーデザイン:末弥純
作画監督:黄瀬和哉他/音楽:川井憲次/音響監督:亀山俊樹
スーパーバイザー:出渕裕/監督:遠藤卓司
総監督:高山文彦/アニメーション制作:マッドハウス
製作:バンダイビジュアル、東北新社
配給:松竹
© HEADGEAR/EMOTION/TFC
https://www.bandaivisual.co.jp/patlabor/

Text: Shinichi Ishikawa

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葛西由香
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