展覧会の開催に先駆け、ダイチは「イズ・イット・トゥルー？」（それは本当か？）という題名のドキュメンタリー風のテレビ番組を制作した。リアリティ番組、粒子の粗い画像、残虐行為の目録、または単純な不条理から多くを盗むといった、フィクションである。

オージェイ・シンプソン事件からスタートするこの番組。前半はエンターテイメント風だが、次第に真実が浮き彫りになってくる。15人のクラスメートを銃弾で殺すコロンビア高校の生徒たち。エイリアンがやって来て彼らを捕まえるのを待っていた天国の門派の集団自殺。遺伝子工学、羊のドリー、リアリティ番組、チャットルームの多くのアイデンティティ、アバター、仮想、メディア通信業界、マイケル・ジャクソンと彼の砂糖漬けの牧場、マウスへの人間の耳の移植、ウィルデンシュタイン夫人の最新の形成外科と多くの想像力のおかげで、ウーマン・タイガーを再発明。湾岸戦争のニュースを求めてCNNに目を向けたサダム・フセイン。現実ではあり得ない設定から、これらはビデオゲームの世界だと確信する。ビデオカンファレンスに間に合わせるために、オサマ・ビン・ラディンを取り入れる時間がなかったそうだ。

作品に登場するアーティストは、現実から盗み、日常生活のシーンを作品に移植し、私的な想像力ですべてをフィルタリングし、真と偽を区別することが不可能な美的世界を境界線上に構築することになる。幸いなことに、私たちは文脈や類似性を認識していない。人生の混乱を描写するための手段やコードを自由に使用できる。グローバリゼーションは少なくともアートをラベルから解放しただろうか？

Pierre Huyghe (with John Wojtowicz), “The Third Memory”, 2000

ピエール・ユイグの「サード・メモリー」は、長い廊下の終わりに現れる。これは、ある意味で「フィクション」を象徴する作品だ。1972年のブルックリンでの銀行強盗は、シドニー・ルメットの映画「狼たちの午後」の主題になった。ユイグはそのセットを再現し、アル・パチーノが演じた脚色を修正しながら、本物の強盗ジョン・ウォトヴィッツを追跡し、事件のために6年間投獄し、現在歳をとっている姿を撮影した。2台のプロジェクターが映画のシーンとアーティストが撮影したシーンを交互に映し出す。ユイグはこの作品で、映画のフィクションとリメイクの真実による、2つの間の混乱によるパラドックスを一致させることに成功した。

Vanessa Beecroft, “VB 45”, 2001, Chromogenic print on photographic paper and aluminium, 127 x 160 cm © Vanessa Beecroft

20世紀の終わりの文化に調和する、アレキサンダー・マックイーンのハイヒールとフィリップ・トレーシーの帽子だけで着飾ったヌードモデル達によるヴァネッサ・ビークロフトのパフォーマンス。帽子は女性の顔を覆い、時代を超越したデキリコのようなアイコンの様で、現実と非現実が混ざっている。

エイミー・アドラーは、自分自身を再現するために、自分のヌードを描き、それらをレタッチして写真を焼く。それは、対象を一度遠ざけて、別の人生を自分自身に譲る方法だ。2人のイギリス人アーティスト、ティム・ノーブルとスー・ウェブスターもアートの虜になってしまった人達だ。「ニュー・バーバリアンズ」と題した作品では、歴史と進化を奪われた背が低く不器用な2人のネアンデルタール人の抱擁が表現されている。