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「コントロール・スペース」展

HAPPENINGText: Timo Linsenmaier, Joerg Radehaus

オランダ生まれのアーティスト、アルコ・ハグスマは、「見る事と見られる事」の相互作用について自分の言葉で述べている。ゲームとしてお互いに見るということを体験してもらうために、彼はビデオとセンサー技術を用いた。「生物機能:ヴィルノ」のインスタレーションで、ハグスマは、ヴィルノという名前をつけた自由に動く機械の腕を部屋の中心に置いた。天井からぶら下げられたヴィルノの先端にはセンサーとカメラが取り付けられ、状況は部屋の隅に置かれた四つのモニターで見る事ができる。センサーが部屋に入ってきた人を感知すると、ヴィルノは入室者に近付き動きを真似る。純粋に実験的な意味で言えば、間違いなくテクノロジーが使われており、そのおかげでヴィルノは生物の特質を表現できる。訪問者との親近感、接点、対話を探すと同時にヴィルノは反対側にいる何も怪んでいない人を突然写し出すこともできる。イメージは四つのモニターに一斉に写し出され、ヴィルノのカメラは我々を監視しながら、我々をこのカメラに対して何かしらのリアクションをおこしたい気にさせる。役立たずだったり退屈だったりする機能は一切ない。最終的にカメラは我々なしに存在できるようなものになるだろう。


Biological System: Vilno, 1997 © Harco Haagsma

カメラとのインタラクションの話から離れて、フランス人アーティスト、ソフィ・カルについて話そう。彼女は定期的に極端な意味で「のぞき」を題材に取り組んでいる。初期の有名な試みは、パリ(ある時はイタリアのベニス)で、通りすがりの人をつけ回したり、ホテルの宿泊客の私生活を極秘に調査するためにメイドとして働くことなどが含まれていた。


The Shadow, 1981 (Detail) (English Edition, 1985) Courtesy Sophie Calle und Paula Cooper Gallery, New York; VG Bild-Kunst Bonn, 2001, Photo: Tom Powell © Sophie Calle

シャドー」と呼ばれる展覧会で、彼女は自分自身を調査の対象にした作品を発表した。『1981年4月、私の要望で、母は探偵社に行きました。私を追跡し、日々の行動を報告し、私が存在するという証として写真を提出するように頼んだのです。』簡潔な文章でこの奇妙なダブルゲームを説明している。彼女は、綿密に日々の計画をたてていたが、探偵には、彼女の行動の深い意味はわからないままだ。ソフィ・カルが始めてキスをしたルクセンブルグの庭園や、ルーブルのティツィアーノの絵の前で佇んでいたりと、彼女にしか意味を持たない場所に状況を理解していない探偵を置く事で、観察者と対象物の間に存在した隔たりは消え失せた。最終的にこのアーティストは、伝達された情報の不正確さを視覚化したのだ。プロとしての経験があっても探偵が遠くから観察したぐらいでは、芸術家の性格を明らかにすることはできなかったし、重大な意味を持つ出会いなどを彼女が故意に計画していることも分からなかった。後の展覧会で、ソフィ・カル自身から補足された情報やコメントを見る事によって、観客は知覚と観察という異なるレイヤーで結ばれた場所のなぞを解く事ができる。それでもなお、この見知らぬ人々の正確な印象を持つ事が難しい。


Nacht 1, II, 1992 Leihgabe der Stadt Nuernberg, Erworben 1993 © Thomas Ruff and VG Bild-Kunst, Bonn, 2001 Photo: Neues Museum in Nuernberg

写真の世界では、トーマス・ルフが 1992年に開催されたドクメンタ9で「」と題させる一連の大きな写真を初めて出展した。人気のない夜の景色はどれも似通っている。誰もいない裏庭、運河の上に架けられたスチール製の鉄道橋、明かりで照らされた家の入り口、駅前にとめてあるトラック等々。湾岸戦争で有名になった低レベル赤外線装置を用いたので、これらの写真の質は悲惨だ。ルフは、ニュースで使用されたあの緑色の写真の記憶を呼びおこす。軍事的あるいは歴史上の特定の出来事としての意味だけだはなく、あの戦争特有のメディアの重要性も提示する。これらの大きな緑色の写真が持つ意味はそれだけには留まらない。写真が何を写し出す事ができるか、あるいは、そこに存在する光景が何を記録することができるかなどという概念を超越した物だ。ルフは、イメージの効果や知覚を考え抜いている。

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