「英語を話せないアーティストは、アーティストではない」展

HAPPENINGText: Mark Griffith

シリア人とハンガリア人のハーフ、ローザ・エル・ハッサンと、彼女の仲間であるセルビア人のミリカ・トミッチは、最近ウィーンで発表されたポスターに載せた、アイデンティティと頂点に達している人口過剰を思わせる写真シリーズを展示した。


Roza El-Hassan width Milica Tomic, Driving In The Porsche, 2000

アドバスターの名でこれまで広く知られてきた、ハッサンとトミッチ(トミッチはユーゴスラビアのゲリラ兵のユニフォームを着ている)は、オーストラリアで勢いのある右翼の政治家、ハイダーの実在するポスターの中に自分達の姿をデジタル処理で入れてしまった。幸せそうに彼のポルシェの狭い助手席に身体を収めている。ハイダー氏の車中を過密にしたこの画像処理の結果は、ウィーンギャラリーの壁に展示されていて誰でも見ることができる。この作品のために2人が設定したスローガンは、「人口過剰について考える。」である。そう、そのスローガンは英語である。


Roman Ondak, Antinomads, 2000, 12 postcards, postcard stand, each postcard 10.5 x 14.8 cm, Courtesy of the artist © Roman Ondak

しかし一方で「西」(どこで西が始まろうと)に移住した遊牧民の東ヨーロッパ、スロバキアのアーティストは本展では彼自身に対して冷静に反応している、と右翼のオーストラリア人は思っているかもしれない。ローマン・オンダックが撮影した普通のスロバキア人の姿が、普通の値段(米通貨で各20セント以下)で売られている普通のポストカードがある。彼らの多くは、共産主義時代からの質素ではあるが快適そうなアパートで被写体になっている。オンダックはとても静かな情景を写し出しつつ、自分の名前はカードに載せていない。全て「アンチ・ノマド(反・遊牧民)」と名付けられている。スロバキア人は、それぞれに思慮深く、落ち着いていて、どこにも行きそうにない。ウィーンへ行ってハイダーのポルシェに乗り、定員オーバーのお手伝いをするなどするようにはとても見えない。

もちろんポストカードは、世界中どこへでも宛先通りに旅をすることができるのだが。

An artist who does not speak English is not an artist
会期:2001年6月15日〜7月28日
会場:Knoll Gallery Budapest
住所:10 Liszt Ferenc tér, 1061 Budapest
TEL:+36 1 267 3842
https://budapest.knollgalerie.at

Text: Mark Griffith
Translation: Naoko Ikeno

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