ケン・イシイ

PEOPLEText: Shinichi Ishikawa

ジャパン・テクノの先駆者的存在であるケン・イシイ。しかし、その活動の範囲は「テクノ」というフィールドの中でおさまりきれるものではない。待望の新作は、8月19日より全国ロードショーされる映画「ホワイトアウト」(監督:若松節朗/主演:織田裕二)のサントラを含む、「FLATSPIN」を8月18日にリリースする。「今までの集大成」とも語った本作の、サウンド・トラックという新たなアプローチについて、そして彼自身のルーツについて、ライブパフォーマンスの為に訪れた札幌で取材した。

札幌には何回か来られていますね。

そうですね。札幌は親の実家があることもあって、小さい頃からちょくちょく来ているので、街の感じも知っています。僕は生まれたのも札幌なんですよ、病院だけですけど。印象としては、都市としての機能もあるし、アートワークも身近にあるので、サイズとしてちょうどいい。ちよっと行けば自然もあるし。

ツアーで海外も良く行くと思うのですが、日本と外国の違いはありますか?

日本ひとつと他の沢山の国とを比較するというのは、無理がありますが、細かいところで微妙には違いはあります。実は、月曜までオランダにいたのですが、そこでジャズ・フェステバルに出演しました。レイブみたいな大きな野外のライブだったのですが、基本的にオープンマインドな人が多くて、その時はサックス・プレイヤーのダルファーと一緒にダンス・ビートにサックスを重ねる感じでプレイしたんですが、観客のお兄さんから、おばあさんまで立ちあがって踊りだすんですよ。反応がとても良くて、ミュージシャンとしてとても楽しかった。よい曲ならどんな音楽でも、いい反応が返ってくる。どこでもいいハコがあって、いいプレイができれば、いいことだと思います。

日本より外国のほうが環境的にもいいということでしょうか?

そうでもありません。日本のほうがテクノの良いセンスを持っている人が多いな、という感じはします。曲をちゃんと聴いてくれる、音楽好きが多いと感じますね。ヨーロッパなどは確かにクラブシーンは大きいんですけど、その分、普段はレコードは買わないで、踊りにだけ行くという人も多いですから。日本のほうが、曲に対して敏感に反応する人は多いと思います。

アルバムを作るのとDJプレイをするというのは分けて考えているのでしょうか?

それはあると思います。アルバムの場合は自分の頭の中にあるアイディアをいかに表現するか、というのを考えますし、DJをする時はダンスフロアで、楽しめるようにと思っています。

新作は映画「ホワイトアウト」のサントラの曲でもありますが、通常のアルバム製作との違いはありましたか?

普通にアルバムを作る時は、基本的に一人でできますが、サントラの場合は、映画の監督さんや沢山の人が関わっているので、その中でどう自分らしさを出していくかという部分で、心構えは違いますね。今回は台本の段階から、このシーンに合う曲ということで依頼されているので、かなり意識はして制作しましたが、今までの自分のスタイルは出せたと思います。

8月にはフルアルバムがリリースされますが、どのような内容になりますか?

前作「SLEEPING MADNESS」は、新しいことをやろうという部分が濃くて、いろいろなテクノ/エレクトリックでないアーティストと一緒にやってみたりしましたが、今回はサントラということで、半分自分でないような感覚があって、まず映画のメインテーマがあって、他の曲もそれを元にどう作っていくか考えたりしました。自分のなかでは、テクノの初期衝動に近い感じで作っています。最近は新しいテクノのスタイルが出ているというのもあって、そこにパワーを感じていて、今回は原点に戻ったという感じがあります。ここ数年では一番テクノっぽいかもしれない。ビートが強いのも多いし。いままでやってきたテクノの2000年ヴァージョンという集大成的なところもあります。

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