NIKE 公式オンラインストア

ミリア 2001

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

この急速なテクノロジーを伴ったサービスの進歩とプラットフォームの変化には、小さな存在であるアーティストやデザイナーたちには、なかなかついて来ることが日本だけでなくヨーロッパでも難しいようである。とにかく、アーティストやデザイナー自身の手によってこのミリアを舞台に提案し切った存在にはなかなか出会うことが無かった。

何しろ先に触れたビバンディ・ユニバーサルCEO兼会長のジャン‐マリー・メージャーは、自社のインターネット上でのコンテンツビジネスに対する見通しとして、既にネットワーク・ゲームサービスでは世界のトップクラスの収入をあげていると豪語するとともに、それが既に黒字になっており、利益幅が広がるものと示したのだが、そのネットゲームの内容とは、簡単な古典的なゲームにプライズを伴わせながら翻案したり、カジノ的なものであったりするのだ。もはやポリゴン数が多くて、作り込んだ仮想物語世界の探検といったようなギークチックなものが先頭をきってもてはやされるというものでもないのだ。確かにそれはそれでうけるだろうが、努力の割に目新しいものでもなく、ワンオブゼムでしたないのだ。そこで新しい表現や作品を作り出して行く作戦が必要なのだが、どうもついて行ききれないみたいなのだ。

その中にあって広いミリアの会場の中の片隅の薄暗い小さなブースにあって、常に説明待ちの人だかりができ続けていたクリエーターたちが存在していた。ユーモラスでかわいらしいが子供くさくないキャラクターたちと自身のチーム名をカタカナであしらったディスプレーが目をひくシマンである。この地元フランスの若き日本好きクリエーター・チームは、これらのキャラクターがふんだんにあらわれる、バンジャという仮想世界をインターネット上に設置、独自の物語世界とその中でのコミュニティーをフラッシュベースで日々作り、拡大し続けている。

昔から少年の心を持った人々をわくわくさせてきた読本的な冒険世界がインタラクティブな世界になってシーマンの手によってあらわれたのだ。誰もが何時でもその物語の世界に入り、ままに体験し、そしてその世界は広がり続けているのである。インタラクティブなメディアの持つ特性を感じ取り、その特性にあった物語をコンテンツとして提供するチーマンはまさにその新しい作戦を編み出して突き抜けつつある存在なのだ。シーマンの世界は今、ファットボーイスリムのアルバムのCMにアニメーションを提供するなど他のメディアにまで拡散し始めている。チーマンはこのインタラクティブが当たり前になる時代の先駆けの中の席取り合戦の中で、クリエーターとしてしっかりとした席を獲得しようとしているのだ。

このテクノロジー・サービスの変化の潮流激しい中で、アーティストやデザイナー、クリエーターが席取り合戦でしっかと席に座るにはどうしたらいいのだろうか。

まずは料理人と同じように果敢に新しい素材(テクノロジーやサービス)に対する好奇心をはたらかすことが必要である。今、振り返ってもほんの3年前にはまだまだ先といっていたようなサービスやメディアがあがってきている。まだまだ先と思わせられていて実は着々と準備は進められているのである。今はデジタル放送を中心に広帯域なデータ伝送がどうなるかを注目する必要があるだろう。

そして、その素材をおさえている人と積極的にコミュニケーションしよう。相手もどんな表現やコンテンツが可能なのか思案の最中、情報交換のコミュニケーションから本当の情報を分かりやすく得ることができるだけでなく、そのことそのものがブレーンストーミングであり、売り込みになるのである。

もはやデジタル・コンテンツ・ビジネスの世界は、ヨーロッパもアメリカも日本やアジアも同じフィールドとなってきている。何処に居ようとも果敢に飛び込み、コミュニケーションを果たすことができれば、席獲りのチャンスはいくらでも拡がっているのだ。

Milia 2001
会期:2001年2月10日〜14日
会場:Cannes, France
TEL:+33 (0)1 4190 4479
https://www.milia.com

Text: Tomohiro Okada
Photos: Tomohiro Okada

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE