NIKE 公式オンラインストア

NUMER.00

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

他にも多種多彩の論者によってみっちり朝から晩まで2日間にわたって行なわれて議論の中で特に印象に残った議論を最後にお伝えして行きたい。

筆者自身も論題としてあげたことだが、インタラクティブ・デザインの現場で起きている教養の欠落が世界規模でのクリエイティビティーの中で大きな問題となっていることが認識できたことが印象的だった。それは、ユーザーと技術者、そしてデザイナーと時にはアーティストとの間がそれぞれ同じ言語で語れなくなってきており、うまくコミュニケーションをすることが多くの現場で難しくなっているクロス・ターミネーションが起こっているという問題で語られた。また、今までのインタラクティブ・デザインやメディア・アートの文脈からノウハウと発想を吸収することよりも、最新のバージョンのソフトウエアの使い方を重んじる傾向がプロダクションの現場のみならず、教育現場にのみ入り込んでいること。ということが、インタラクティブ・デザインそのものの美学的な、もしくは創造性の溢れる発展を阻害するのではないかという危機感が共通認識として論者たちの間で持たれたことが印象的であった。

それを解決する手段としては、まさに今までのデザインやメディア・アートの流れをいかに魅力的に伝達することができるか、そしてこの今までのように先端技術の現場と結びついてテクノロジーと相互の得意技を活かして格闘できるかたちを再び当たり前のものにすることが必要だろう。まさに先端技術の現場と直結した産物としての過去のインターフェイスにまつわる歴史と物語は十分魅力的なものであるのだから、このことは可能なのである。そして、これらの創造活動に対して広く評価しあいコラボレーションを可能とするプラットフォームが必要であり、そのようなコミュニケーションに長けることで更に強化されるデザイナー像こそがジョシュア・デイビスなのである。これらの解決策そのものがかたちになり続けている機関であるMITメディアラボの大学院でビジュアル・インターフェイスの研究と作品制作を行なっているキャシー・リアスのもとに、本会の後、若いデザイナーや学生たちが交流を求めに集まったのは実際にそのことが望まれている証左ということができるだろう。

まさにインタラクティブ・デザインを極めるためには、沢山の批評や意見、そして技術へのチャレンジとそれを補うためのコラボレーション、そして創造性の源泉としての教養を広く高め続けることが必要なのだ。そのことを自然と成し遂げることができるために、一人一人にグローバルな関係が必要とされるだろう。なぜかインタラクティブ・デザインの世界ではなかなか若手にとっては難しかった、関係づくりと情報収集の機会としてNUMER.00はよく機能したといえる。これから継続して、このような関係づくりとネットワークづくりを続けられることが、 NUMERの目的を実現するためには必要だろう。そして、パリで今、置かれているこの状態はどことなく、今の日本に近い状態に思えたのであった。インタラクティブ・デザインの地位を向上させるためには、デザインに携わる私たちそのものと、そしてそれを取り巻く現場や社会のインタラクティビティーを高めることが先決なのである。パリというインターフェイスがこれからどうバージョンアップするか、期待したいところである。

Numer.00
会期:2000年12月9日、10日
会場:Ecole Nationale Superieure Des Beaux-Arts
住所:14 Rue Bonaparte, 75006 Paris
http://www.numer.org

Text: Tomohiro Okada
Photos: Tomohiro Okada

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
フェルナンド・トロッカ
MoMA STORE