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アルス・エレクトロニカ 2000

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

ゴールデン・ニカを受賞したのは、メキシコ政府の千年紀終了記念イベントとしてメキシコ・シティーのゾカロ広場を舞台に展開した「ベクトリアル・エレベーション」。古の帝国のピラミッドが聳え立っていた聖なる場所であったが、スペインからの入植者の手によって崩され、今は巨大なカトリックの教会と、市役所、そしてホテルが取り囲み、デモの集会に頻繁に使われるなどメキシコの首都を象徴する場所となっているゾカロ広場の天空に古のピラミッドの姿を光によって蘇らそうという発想から始まったこのプロジェクト。実はこれだけではなかった。今まで多くあった光のスペクタクルが持つ権力や単なるエンターテインメントの陶酔感ではなく、メキシコに在る誰もが共有できるものとするために、インターネットを用いて誰もがその光のデザインをできるようにしたものなのである。

その結果が、18個ものスポットライトを 3DJAVA によるクリッカブルなシミュレーションによるコントロール・パネルを見ながら、インターネットを使って自由に設計できる光のスペクタクル。期間中、6秒間毎に持ち場が巡るパターンの設計を可能とするサイトに 89カ国、 そしてメキシコの全地方(メキシコ国内からのアクセスは全ての70%)より、 70万以上のビジターによるアクセスがなされた。パターンの設計に成功した者には設計案の 3D イメージとともに、実際の点燈の模様を撮影したカメラ画像、そして設計者のメッセージが添えられた独自のウエブサイトが生成され、その場に居なくても見届けることができるもの。現実に見て誰もが美しく感じ、心昂ぶり、仮想空間でも楽しめ、あらゆるかたちで参加できる、あらゆる存在を包み込むインタラクティブ・アートのかたちの一つが生まれたことを称えての受賞なのだ。

ディスティンクションに受賞したものの中には、美術館に収めてくれないことは確実でかつ、受賞者が「軽犯罪者を助長しているのだから俺たちを写すな」とおどけてみせてくれる「グラフィティーライター」というものもあった。今やなかなか大衆に理解されない、運動家たちの悲哀をロボット技術で支援する応用自律研究所(The Institute for Applied Autonomy)による、アクティビズム用のロボティック・マシーンの第二弾である。「応用自律研究所」は「ロボットを軍事や大資本、そしてマーケティングの道具としてだけではなく、広く人々に開放することを目的である」と自身を語る。そこから生まれた、アクティビズム用のロボティック・マシーンはまさに、ロボットと社会との関係を皮肉に浮き彫りにするものばかり。

『アクティビストをするのも大変なんだよね。デモをしてもみんなフレンドリーじゃなくなってきたし…』『じゃあ、コミュニケーションを大衆がとってもらえるようなロボットを作ろう、ロボットは子供も好きだし』そこで生まれたのが第一弾の「リトル・ブラザー」。どうやったらビラをもらってもらえるのか? その解決策を調査した結果、キュートなものに人は弱いという結論を導き出し、キュートなロボットを作ろうという結論に辿り着いて製作に着手。何がキュートなロボットかという研究を今までのSFのイメージや日本のアニメーションなどの分析を通じて行ない、その結果として生まれたのが大きくて真ん丸な目が特徴の「リトル・ブラザー」だという。ロボコンを髣髴させるキュートなロボット声と電子音で道行く者にビラを取ってもらうことをせがむ姿は、野暮ったい風貌の活動家が配るよりも絶大な成功をもたらし『今まで取り込むことができなかった子供やお年寄りからの関心を得ることができた』(メンバー:匿名)と成果を誇る。

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