第11回 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭

HAPPENINGText: Shinichi Ishikawa

プロダクションI.G.の短編アニメーション集「DIGITALS」。セリフ無しのプロモ色濃いフルCG作品で、常にプロダクション名がクレジットされていたりするが、平均2〜3分の作品のなかにキチンと起承転結がついていて、単なる技術のみせびらかしに終わってないのがお見事。ストーリーが技術負けしていない。監修が押井守なのもダテではないかもしれない。

「LOOP」(プロダクションI.G.

その辺りが少し伝わるように簡単にストーリーを説明してみると、人形を組み立てる人物のミステリアスなリンクストーリー「LOOP」、高圧電線のタワーを友人だと思った電線形エイリアン(?)の不遇な出来事「FRIENDS」、主人にエイリアンから命をかけて守られた愛犬のもの悲しいアフターストーリー「HEART EATER」、擬人化された飛行機のラブ・ストーリー、彼女がジェットなのだが、彼はレシプロ(プロペラ機)。そのため彼はコンプレックスのかたまり。ところが、ある時彼女がエンジントラブル…、彼女を助けなきゃ、という「WING’S TREE」。

「WING’S TREE」(プロダクションI.G.

その他、「R」(札幌デジタル映画祭ワークショップ)、「鉄コン筋クリート」(STUDIO4°C)、「圭角/風雲伝異聞」、「空中居酒屋」、「チキン保険に加入下さい」(STUDIO4°C)などが紹介された。


Tekkon Kinkreet Trailer (STUDIO4°C)

トータルの雑感としては、デジタルという最新のテクノロジーは間違いなく映画の製作プロセス全体を激変させるのは間違いない(特にコストや労力という点で)が、映画のおもしろさとは、結局のところテクノロジーではなく、人間を描く良質のアイディアだということを再確認できたということだ。例えば、「HEAVY ROTATION」のブラックユーモア、「鉄コン筋クリート」の羨ましい自由奔放さ、「DIGITALS」の濃縮された人間味あふれるストーリー。本質は喜び、怒り、悲しみという今も昔も変わらない普遍的なものだな、と感じながら、会場を後にした。

第11回 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
会期:2000年2月18日(金)~22日(火)
会場:ゆうばり文化スポーツセンター、夕張市民会館
住所:北海道夕張市内
https://yubarifanta.jp

Text: Shinichi Ishikawa

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