JODI

PEOPLEText: Akira Natsume

今までの歴史を振り返ると、ファックス、電話、TVと道具の進化と共にコミニケーションそのものが変化を起し、結果的に社会が変わってきた事実があります。そして、21世紀を迎えようとする今、インターネットなどのデジタルネットッワークによって、60、70、80年代のアーティストの理想的環境が実現されて来ていますが、そのことについてどう考えていますか?

ディルク:直接的な答えではないかもしれませんが、3、4年前、インターネット上に沢山のオルタナティブグループがいて、デザイナー、アーティストや若い子達がウェブサイトを作っていました。そのためにサーバーのスペースを借りますよね、今では20ドルくらいで借りれますけど。でも、プロバイダー企業の状況というものはとても危ういもので、今ではすでにそういった企業が例えば、ポルノはダメとか、ハッキングはダメとかウィルスの配布はダメというように規制しています。あれもダメ、これもダメという風に誰かがそこに付加していけるわけです。そういう風に、将来、プロバイダー企業の状況に変化が伴うとともに、ネット上の状況も同じで、例えば、オルタナティブな人の活動の場がなくなりかねない。サーバーのレンタル料金の高価格設定によっても、活動が難しくなる。

例えば、今の倍以上の料金になったときに、沢山の商業的ではないサイトを手がけるクリエイティブな人がネットに存在しなくなる可能性がある。そういう意味でも、サーバーがどう機能しているのかを習得することが大事です。基本的にサーバーは放送の場では核にあたる部分、ラジオでいうところの送信機なんです。今、安くレンタルできても、何か状況が変化すれば、商業的なものや成果のあるものだけが残っていく。ネットカルチャーやネットアートに関わっている人は特に、このことを意識していくべきです。

美術館で素晴らしい展覧会を開いても、ネットの将来とか本質はどうでもいい。そういう状況、ネットアートの過度期が10年は続きますよ。いつもそういう状況があって、ビデオアートの時も同じです。展覧会を開くだけで、ビデオアートのテレビチャンネル制作のことなんてどうでもいいわけです。でももうそれもすたれてしまった。こういった状況をネットに引き起こしてはダメなんですよ。だからアーティストはサーバーのシステムをすこしでも把握しておかなくてはならない。このことを意識して活動しているアーティストでは、ニューヨークのポール・ギャリンのプロジェクト「Namespace」がいい例です。

もちろんそういった規制によりアートや、コミニケーションのあり方は変わってくると思いますが、現在のインターネットや社会の変化は、作り手側と受けて側も含めて言葉を越えたイメージのコミニケーションにシフトしてきているように感じてますが。

ヨアン:でも特にインターネットは言語ベースだと思うんです。

ディルク:コードとかね。

ヨアン:そう。Eメールだって言語だし、HTML等も全て言語ベースです。そういった意味ではコミュニケーションに変化はないと思うのです。でも他のコミュニケーションということではネットだけに限らず、写真や広告などの画像があって、画像だってワールドワイドだし、たいがいの場合は言葉は介さないですよね。

JODIの作品は、そういった「言語ベース」の現在の社会をある意味、よく反映していると思います。コンピュータネットワークが普及しているにも関わらず、現在の社会では音楽でもグラフィックでも言葉に置き換えられているわけですが、JODIの作品は言葉を使わないで見たままを感じさせる、もっとストレートなものだと思うのですが。

ディルク:長い間、私たちの作品は「ノー・コンテンツ」「ノー・ストーリー」が、ガイドラインとなってます。

ヨアン:アートに関していえば、説明がないのはよくあることです。例えば、ペインティングとか見ると、何かを伝えているかもしれないですが、そこには言語とか言葉はないですよね。それは画像の歴史だと思うのです。私たちはそこのところに取り組んでいるのです。私たちはコンピュータを使ってるから、そこから画像がダイレクトに展開される。それはある種、唯物的なシステムです。

ディルク:「ノー・コンテンツ」「ノー・ストーリー」の他に「マテリアル・デジタル」ということもあって、デジタルっていうのはコンピュータにより作られる、なんか抽象的な感じのするものです。私たちがプログラミング等を多くやっているからかもしれませんが、デザイナーも同じような感覚を持っていると思います。デジタル作品にも、クリーンな感じとか質感みたいなものがある。すごく物質的です。エレクトリック・イメージもそう、色や質を作り出せるのです。

ヨアン:歴史ということでは、それは3年前とかそんなに新しいことではなくて、すごく古い。特にゲーム等のコンピューター・イメージの歴史とか。初期のゲームやコンピューター・ドローイングとかね。

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