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+81

THINGSText: Atsuko Kobayashi

日本の雑誌のシーンについて、これからどうなると思いますか?

ここしばらくはずっと写真を多用した雑誌中心ですよね、写真とアイドル。豊川悦司とか吉川ひなのとか永瀬(正敏)とか、そういうアイドル的なものがあって写真がある、というような。デザインはもう飽和状態になっていると思います。ビジュアルだけだとやっぱり駄目で、読めなきゃ駄目だなっていう方向になってくると思います。エディトリアルデザイナーの若い人がそろそろ出てくるかな、とも思ってます。

インターネットでの発信は考えていらっしゃいますか?

世界に向けて同時発信する事を考えたら、やらなければならないですね。現在計画中です。雑誌の全く同じバージョンではなくて、インターネットでしかできない事をやりたいので、全然違うものになると思います。
今回の香港取材は返還前に行ったんだけれども、発売されたのは返還後ずいぶん経っているわけで紙媒体はどうしても遅くなってしまう。インターネットでは彼らのリアルタイムの活動を発信していきたいですよね。インターネットでは満足できない、紙メディアとしての良さは雑誌で、という風にわけていくのが正解じゃないかと思います。

具体的にはどういった企画になるのでしょうか?

文字ページには全然ビジュアル入れないようにしようと思っています、動いたり、時間かかったりするのはやめよう、と。読ませるページは早いのに越したことはない、ビジュアルとテキストはわけないとね。
インターネットだと、飛んで、飛んで、飛んで、見つけたものが、あ〜つまんなかった、みたいな事があるけれども(笑)、そういうのは何とか解消したいですね。紙メディアとインターネットメディアのいい所を生かしていきたいですね。GASBOOKの夏目くんともそういう話をしているんだけれども、CD-ROMにはCD-ROMにしかできない事があるから、紙メディアとホームページとCD-ROMをリンクさせる事、そういうコンテンツを考えています。みんなその辺考えていると思うんだけれども。SHIFTも紙メディアを作ろうと思えばすぐ、できるんじゃないのかなって思いますけど。

インターネットでビジネスを考えている部分はありますか?

一つは通販ですね。本とTシャツ、フォントとか。今回の+81でも販売しているけれども、やっぱりフォントとかはフロッピーを買いに行く手間が省けていいですよね。
通販以外だったら、ゆくゆくは邪魔なものは取っ払った、自分が必要なものだけがあるコーナーが欲しいですよね。検索エンジンを使っていて思う事なんだけれども、インターネットって海の中に石投げているみたいなものじゃないですか、ネットサーフィンなんていうかっこいいものじゃなくて。呼吸困難になりながらやっと一個の石を見つけた、って感じじゃないですか。海に潜って海女さんが真珠を見つけるような作業。モニタの水中メガネをつけて、潜っていって、ゴミとか見つけたりしながら、見つけた!ここに目印つけとこ、みたいな(笑)。
それを何とか近道したいですよね、近道させる事をやりたいですよね。後、メールもそうじゃないですか、不必要なものが来る、泳いでいてサメに会ってしまった、みたいな。安全にもしたいですしね。整理が必要ですね。実際、今お年寄りのお金持ちしか入れない会員制のサロンページ始めている人がいるけれどかなり入会者も多いみたいですしね。

もっと細かくカテゴライズされた検索エンジンがあったらいいかもしれませんね。

そう。SO-NETの人とも話をしていたんだけれども、たとえば小西(康陽)さんのアイコンがあって、小西さんのディレクションによるサイトの検索ができるとか。同じように+81があったり、SHIFTがあったりしてもいいと思います。会員制で興味ある人だけが利用できる場、そういうサロン的なものが必要だと思いますけどね。まあ、そういうの作ると他派ができてきたり、日本人はすぐつるむ、とか言われてしまいそうですけれども(笑)。

+81編集部はカナダ大使館のある赤坂の閑静な住宅街の中にある。音楽関連のPOPやタワーレコードにおかれているグッズなどの制作を行っている D.D.WAVE社の別室にあたるため、TシャツやBAGなどといったグッズが所狭しと並び、一見アパレルメーカーのプレスルームかと思うような部屋だ。
頻繁にかかってくる電話、来客に自らこまめに対応しつつも、蜂賀氏は丁寧に取材に応じてくれた。蜂賀氏から次々に出てくるクリエイターの話題、話しながら持ってきてくれるブックレットや写真集など、その量とテンポには驚かされた。そこはまさしく世界のクリエイター達のクロスポイントとなる“+81”スペースであり、蜂賀氏自身が“+81”サーバたる存在だった。
ボーダーレスという言葉が使い尽くされたにもかかわらず、本当にカッコイイもの、良いクリエイションの情報はこれまで国境を越えて共有できてきただろうか。+81は国内で唯一、その答となる雑誌だと思う。次号、日本&アメリカ特集も、そして近々アップするであろう+81ウェブも、蜂賀氏の動きには目が離せない。

「+81」VOL.1 Autumn 1997
発売日:1997年8月25日創刊
季刊誌
価格:880円
編集/発行:DD WAVE CO., LTD
発売:光琳社出版
https://www.plus81.com

Text: Atsuko Kobayashi

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