パイド・パイパー

PEOPLEText: Chibashi

例えば素材集は現物で配布して、ネットで素材やステッチの組み合わせを確認していく、みたいな。そういうインターネットならではの展開っていうのもあるのかもしれませんね。パイド・パイパーの店舗づくりというのは、人の集まる場所、つまりカフェ的な要素がつまっているような気がしますが、カフェとしての意識や展開についてはいかがですか?

亀石(将也):僕たちは楽しい遊びや、集える場所、作品をを見せあったりできる場所としてすごくカフェも意識していて、やりたいと思っています。例えば今度「A NEW SHOP」をリニューアルする時に、カウンターを作ってカフェを展開していこうと考えています。そこでは本とか小物とかもセレクトしていきたいなと思います。

亀石(剣一郎):「A NEW SHOP」は9月の第一週に改装するんですけど、そこで前から考えていたカフェの展開として中に小さなカフェをつくろうというわけです。別でやりたいと思っていたけど、まだ余力が無いので…。また、カフェの動きっていうのを全然僕らも理解していないので、洋服屋を始めた時の様にゼロからのスタートとしてチャレンジしてみようということで。これが今回ひとつのチャレンジで、1クールして何の支障もなければ、みんなの集うようなカフェの展開を考えてみたいな。ネットワークみたいな大げさな話ではなくても、好きな人が好きな人同士で集えるような場所。そういうのをやりたいです。でも日々それが発展していくんで、単純なカフェになるかどうかもわからないですけど「A NEW SHOP」で実験してみたいなと。

今後のショップの展開は?

亀石(剣一郎):今のところ、無いです。今は「A NEW SHOP」のカフェを全力で進めて、そこから新しいものが生まれるかもしれないと思っています。あとパイド・パイパーの方でも考えているんで、それらを出した結果で考えていきたいと思います。

亀石(将也):パイド・パイパーは洋服づくりを4〜5年ぐらいしてきて、だいぶ自分の中で確固たるものができてきたんで、究極的なものづくりっていうのをTシャツとパンツで自分の中の究極のアイテムを提案して、そういったものだけでずっとこのままっていうものをやっていきたいな。変わっていくとしたら、色だけとか。コンセプトから制作過程まで、自分の中でできる最高のものを考えていきたいです。そこで問題になってくる物はプライスなんですけど…。ディスプレイ的なお店にしたいなっていうのはあります。

プライスが問題というのは、安い服を買えなきゃ楽しめないってことですか?

亀石(剣一郎):そういう意味ではなくて、洋服って芸術でもあるんですけど、実用的なものでもあるんですよ。僕らの間でよく言うんですけど、洋服っていうのは着ないと何の価値も発揮しない。洋服は着てみて初めて洋服なんです。見て楽しむものではないんです。絵とか写真は見て楽しめるものですよね。アートの世界のものは自分の好きなものをゲットして、自分の好きなところに置いて楽しむもので、ギャラリーに行って見るだけでも楽しめるものです。でも洋服は展示場に行って見るだけでは決して楽しめないもので、それでは本領を発揮しないものだと思うんです。洋服って着てみて、その人の着ていきたい場所に着て行って、それを見てもらって判断してもらって、そこで初めて本領を発揮する物だと思ってますから。だから、僕らの消費感覚で、これだったらこの値段だよね。このクオリティーだったらこの値段だよねっていうものじゃなくては嫌なんですよ。

亀石(将也):だから、もしパイド・パイパーでやるんだったらそれが納得いくものを展開したい。そのかわり僕が作る中ではこのサインが入っていてコーナーごとに見せられればいいですね。美術館っぽいんですけどね。1回洋服づくりの中でそういう洋服を作ってみたいっていう願望があるんですよね。でも実際自分が着ている洋服っていうのが、そうかというとそうでも無かったりする。普段着れて値段的にもいいもの…。

亀石(剣一郎):コンフューズっていうのはいつも自分たちの中でしてるんですよ。作る側では、良い素材で良い物で全ていいものを合わせていけばできると思うんですよね。もちろんバランスも大切ですけど…。でもそうすると、究極のものができ上がっても絶対買わないだろうってものになってたりするんですよ。でも作る側っていうのは自分の鬱憤が全てそこに出るし、作品ですから完璧なものを作りたいわけですよね。それでいつも作るサイドとケンカしながらボーダーラインを決めているんですよね。そのボーダーラインを決めないと、どっちかにバランスが崩れても、全て「遊び」ってバランスですから、そのバランスが崩れたらダメなんです。だから僕らはいつも「タイトロープの上を歩いている」ってよく言うんですけど、それは絶対そうなんですね。一歩一歩が凄くアブナイんですよ(笑)

『遊び』というキーワードはとても軽やかで、かつ確信に満ちた者にしか言い切れない重みを持った言葉である。時代から目をそらさず、そして時として残酷なまでに真剣に遊んでいるからこそ、そう言うことができる。そんな辛辣なものを彼等のインタビューを通して感じた。

『80年代はフェイクの時代だ。バブルが崩壊した今こそ「本物」が作れる。今ならそれをやって認めてもらえる。』そう実感することはきっと彼等でなくともできるかもしれない。しかし、そこから「本物」を創り出すために、タイトロープの上を歩きながら冒険し続け、確実に手に入ったものだけを信じて、更に冒険をすることができる者はそういないはずだ。そんな彼等の重く、それいて心底から楽しそうな世界の中にこそ「遊び」は存在しているのかもしれない。

僕らはそんなオピニオン達の壮絶な「遊び」から、どのぐらいの「遊び」を学ぶことができるのだろうか?「A NEW SHOP」にできる小さなカフェ。そこで彼等に会うことができる。門戸を決して閉ざさない彼等に会うこと。きっとそれから僕たちの新しいものの見方が生まれるかもしれない。

PIED PIPER
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-8-4 メゾンジャルダンB1
TEL:03-3402-3029
https://www.piedpiper.co.jp

Text: Chibashi

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